不安症にも種類があり、その治療法もさまざまです。
ここでは、不安にまつわる主な病気の特徴や、よくある症状を紹介します。
不安症に、「環境変化による不安」において
重要な適応障害を加えた4つの病気について、
心や体でどんなことが起きているのかを紹介します。
それぞれに該当する症状のセルフチェック項目を設けています。
半数近くチェックがつく人は、ひとりで抱え込まずに、
医療機関を受診することも検討することをお勧めします。
1 パニック発作や回避行動が特徴的な「パニック障害」
【どんな状態にあるの?】
人がもともと持っている不安反応である「パニック」が、
大きな脅威にさらされていないときにも生じてしまっている状況です。
パニック発作はしばらくすれば治りますが、発作のたびに、
「自分ではどうにもできない」と恐怖を感じて、
「また起きたらどうしよう」という不安が強くなっていきます。
【セルフチェック】
□突然胸がドキドキしたり、息苦しくなったり、めまいがする
□「このまま死んでしまうのでは」と怖くなる
□またパニック発作が起こるのではないかという不安が消えない
□電車などの乗り物や、すぐに出られない場所を避けるようになった
【なぜパニック障害になるの?】
災害や事故などの緊急時に巻き込まれた場合、
人はその脅威に立ち向かうために、
酸素を十分に取り込もうとして過呼吸になり、
心臓はドキドキと激しく鼓動を打ちます。
このように急激に交感神経が優位になるパニックは、
人間に備わった正常で生理的な反応といえます。
しかし、ストレスが重なることで、
なんでもないときにパニックにおそわれたり、
パニック発作の恐怖から「また起きるのでは」
という不安が強くなったりしてしまう方も。
「広場恐怖」といって、パニック発作を起こしたときと
同じような場所や、逃げ場のないところに行けなくなってしまうこともあり、
こうなると社会生活に支障が生じてしまいます。
また、女性は男性の約2~3倍、
パニック障害を発症しやすいとされています。
2 人にどう思われているか気になって仕方がない
「社交不安障害(社交不安症)」
【どんな状態にあるの?】
初対面の人と話をしなければならないときや
人前で発表するような場面で、とても強い不安を感じ、
そのような場面を避けようとする状態です。
具体的には、「学校や職場に行く」「人前で電話をかける」
「外で食事をする」「発表する」といったことができなくなります。
【セルフチェック】
□恥をかくのが耐えられなくて恐怖を感じる
□人前で話すことが逃げ出したくなるほど怖い
□人前で緊張すると動悸、発汗、震え、赤面、トイレに行きたくなる、
お腹が痛くなるなどの症状が現れる
□苦手な場面を想像しただけで怖くて、それらの場面を避けてしまう
【なぜ社交不安障害になるの?】
通常なら、緊張したり不安を感じていても、
経験を重ねることで慣れたり、緊張が和らいだりしていきます。
しかし、社交不安障害の場合、
対人場面で周囲からどうみられているかが気になり、
赤面、震え、動悸、腹痛などの症状が出ることで
「変にみられているかも?」とますます不安になります。
対人恐怖症や、あがり症と呼ばれるものも、この病気の一種です。
「失敗したくない」「恥をかいたらどうしよう」
という気持ちが強すぎることも影響します。
完璧主義の傾向が強い性格だと、社交不安障害になりやすいともいわれています。
3 不安がコントロールできなくなる「全般性不安障害」
【どんな状態にあるの?】
誰かに話を聞いてもらっても気分が晴れず、
いつまでも漠然とした不安や心配事がある状態。
それに加え、体調不良などが現れているようなら、
全般性不安障害の可能性が高いです。
症状は以下に挙げるほかにも、動悸や息切れ、のどのつかえ、
筋肉の過緊張などが挙げられます。
【セルフチェック】
□いつも、ずっと続く漠然とした不安がある
□不安を紛らわすことができず、常に緊張してリラックスできない
□イライラして落ち着かない、物事に集中できない
□寝つきが悪く、夜中に目覚めてしまう
□肩こり、頭痛、めまいがあり、疲れやすい
【なぜ全般性不安障害になるの?】
全般性不安障害は、主に心配性の性格の人が、
さまざまなストレスをきっかけに不安に
とらわれてしまい抜け出せなくなる病気です。
些細なことでも大きな事故を心配したり、
病気になったことを死と結びつけたりして
不安になることもあります。
さらには、仕事や家庭、健康上のストレス(不安)
を慢性的にかかえることで、うつ病や不眠症、
社交不安症などを併発しやすくなるので要注意。
不安を紛らわすため、アルコール依存になりやすいともいわれています。
また、女性は男性の約2倍、全般性不安障害を発症することがわかっています。
4 大きなストレスが頭から離れない「適応障害」
【どんな状態にあるの?】
職場や家庭でのストレスが耐えられないほどつらい、
または自分に合っていないと感じたときに、
不安感や憂うつな気分が強くなり、日常生活に支障をきたす病気です。
つまり、自分にとって大きなストレスに遭遇し精神的ダメージを受けたことで、
その状況に適応できなくなっている状態です。
ゴールデンウィークが明ける頃になるとよく聞く
「五月病」もこの適応障害にあてはまり、無断欠席などの行動に現れることもあります。
【セルフチェック】
□ストレスをうけて間もなく心や体の不調があらわれた
□気分の落ち込み、過剰な心配、もしくは自暴自棄になることがある
□嫌なことが気になって、頭から離れない
□不安や落ち込み、動悸や吐き気などがとてもつらくて苦しい
□心や体の不調のため学校や職場に行けない
【なぜ適応障害になるの?】
適応障害は、ストレスへの反応が強く現れ、
そのことが頭から離れずに「とらわれ」てしまっている状態です。
これには、周りに相談する人がいなかったり、
経験が少ないためにストレスへの対処力が低かったり、
ストレス耐性が弱かったりすることが関係しています。
ただし、適応障害のうつ症状は、うつ病の抑うつ状態とは異なり、
ストレスの原因を取り除くことができれば比較的早い回復が期待できます。
自分に似た症状や、思い当たる項目はありましたか?
不安は「対象のない恐怖」と定義されているように、とらえどころのないもの。
環境や性格が影響していたり、きっかけが曖昧であったりするため、
不安症は気づきにくい病気といえます。
(HELiCO記事より引用)
強い不安や過剰に心配な状態が続くとともに、
心身の不調が長引いたり、仕事や家庭生活に支障が出たりしている場合には、
ひとりで我慢せずに専門医に相談することをお勧めします。
きちんとした治療を受けることで、症状を改善していくことができます。